「才能じゃない 、努力が大事なんだ 」
一見すると勇気づけられるこの言葉が、ある段階を過ぎると残酷な響きになってくる 。
この言葉は 「すべてのことが努力でどうにかなる 」という意味合いを含んでいて、諦めることを許さないところがある 。
挫折することも許されず 、次の人生に踏み出すことのできない人を数多く生み出している 。
陸上トラック競技の世界大会で、日本人として初のメダリストとなった為末大氏は、努力すればなんとかなるという言葉は、一見美しいが残酷でもあるという。
世界でメダルを取れるほど世界を知ったからこそ、努力ではなんともならないことがあることをよく知っている。
そして、だからこそ花形の100mを諦め、400mハードルに冷静に転向できたのだ。
努力がなくては始まらないのは事実であるし、簡単にあきらめてしまえばそこまでで、やはり粘り強くやり抜く力は大切なのだろう。
しかし、このような冷静に、自分と世界を理解する感覚も大事なのだ。
冷静と情熱。このバランスは本当に難しい。